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自由と信念の箱船で恍惚と不安を抱きストロングスタイルで爆進します!
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学術誌のオープンアクセス・オンラインジャーナル化は今後も続くだろう。
これまでは「学術誌はどうなるか」という視点でこの話題を考えたが,
今日はこの流れの中で「論文・査読はどうなるか」ということを考える。
あんまりはっきりしないので,手短に。


オンラインジャーナルでは年間ページ数に制限がないため,
もうすでにPLoS ONEなどが先行しているが,
とにかくたくさんの投稿を受け付けて掲載するということが可能である。
誌面に限界が無い状態での受理する論文の本数は,
投稿数と査読スピードに制約される。
オンラインジャーナルでは「投稿料」ではなく「掲載料」を設定していて,
著者側にとっては投稿段階ではリスクがないので,
雑誌の知名度さえあれば投稿数については自然と伸びるだろう。
さらに現在は多数ある雑誌もメガジャーナルへの統廃合が進むだろう。
(この辺りはコチラに詳しい)

となると問題は査読スピード。
PLoS ONEなどメガオンラインジャーナルでは,
「データクオリティについて査読審査はするけども,
 議論の内容に関しては査読では無く掲載後の読者に判断をゆだねる」
という態度をとっている。
現時点では,査読者側がまだこのシステムに馴染んでいないせいで,
従来のジャーナルと同じテンションで査読をしているかもしれないが,
データクオリティのみ審査という方式は本来査読者にとって望ましい方向で,
(査読はボランティアなので労力が少ない方が好ましい)
どんどん浸透していくのだと思う。
つまり査読スピードを得るために「軽めの査読」が導入されるということ。

ここまでをまとめると,
・世に流通する論文数が増える(誌面の制約がないから)
・議論の短縮(議論が不足していても論文は掲載されるから)
・議論の質低下(トンデモ議論でも査読を通過するから)
辺りが考えられる。
ここでの短縮や質低下は,
あからさまに目に見えるほどの程度でなくて,
検出できない程に微弱な程度で少しずつ進行すると思われる。
(査読者の査読態度が新システムに馴染む速度にあわせて)

この流れが進むとどうなるか。
このシステムの歪みが襲いかかるのはまず読者だと思う。
・論文数が膨大ですべてに目を通すことができない。
・雑誌の名前で読むべき論文の値踏みできない。
・議論の質が保障されていないのでより注意深く読まねばならない。

読者としての研究者がこのような気持ちになると,
その人が著者に転じた時に同じ問題の裏返しが襲いかかる。
・どうせ目を通してもらえない。
・自分の論文の価値を伝える手段がない。
・誤った議論を公表してしまうリスクから執筆がより慎重になる。

こうして論文は,
「ほとんど議論がない結果報告論文」と,
「大きな飛躍のある議論を展開する論文」と,
二極化が進行するだろう。
後者の「大きな飛躍」は,
良い意味(科学が前進する)と,
悪い意味(論理破綻したトンデモ)とがあり,
どうなるかはわからないが,
どちらかというと悪い意味の方が目立つ世界になると予想される。


さて,どうなることやら。

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海洋系の某独法で働く研究者が思ったことをダラダラと綴っています
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