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自由と信念の箱船で恍惚と不安を抱きストロングスタイルで爆進します!
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主にネットで(?)親しくしていただいている朱野帰子さんから新作をいただいたので,
お礼として書評を。

ちなみに,ボクの読書はもっぱらノンフィクションで,
小説は人生で10編も読んでないので,そういう人が書く書評と言うことで,ご勘弁を。





+ + + + + + + + + +


物語の主軸となる5人のエピソードが,
モンスタークレーマー,マニア(撮り鉄),離婚,ストーカー,友達付き合いと,
ちょっと古い人には「理解不能な性癖」に見える「現代社会の病巣」で,
また主人公の同僚達も「仕事とプライベート」で悩んでいたりして,
このあたりも現代社会の典型パターンっぽい感じ。
そういう「怪しい人」の心の揺らぎの部分がすごく丁寧に描かれていて,
この小説の世界観にぐいぐいと引き込んでいくパワーになっている。
全体としては面白いと思うし,朱野さんの人間観察に恐れ入った。

また膨大な取材を感じさせる駅/鉄道に関する描写は,
鉄分少なめなボクにも十分に駅/鉄道の妙味が伝わり,
単に人を運ぶ無機質なライフラインではない駅を感じた。

ただ,読み進めるごとにじょじょに温度,というか,
人間的なウェット感が下がっていった印象を受けた。
特に藤原の忠告がフックする部分がかなりの想定内な展開で,
5人目が「最後の1人」ではなく「ただの5人目」だったもんで,
4人目の「どんでん返し畳みかけ」で盛り上げただけに,
5人目の落としどころが,まさに落としどころでしかなかったのが残念。

あと上で書いた「怪しい人の描き方」という意味では,
ストーカーの内側がまったく描かれていなかったり,
また離婚家族もかなり一般的な人物描写でしかなく,
その前のクレーマーと鉄っちゃんの踏み込んだ描写と比べ,
かなりあっさりというか,悪く言えば適当に流れていった印象を受けた。
これも読み進めるごとに温度が下がった感じの原因かもしれない。
(実体験に基づくか否かの違いなのか?と邪推したり)
あとはペロっと仲良くなっちゃって家に入っちゃうのも,
それってどうなん?と思う部分ではありました。

本作(や前2作)のような事件が起こるような群像劇ではなく,
もっと狭く深くジメっとした人間描写い終始する方が,
「朱野ワールド」が最大化されるのではないかと思うわけです。

星の数で言えば,3つです。
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海洋系の某独法で働く研究者が思ったことをダラダラと綴っています
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