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自由と信念の箱船で恍惚と不安を抱きストロングスタイルで爆進します!
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大学の教育とか,そういう議論とは別物として,
経済社会における「大学生」ってものを考えてみる。

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まずは一般用語の整理から。
厚生労働省のウェブサイトに「厚生労働に用いる用語解説」がある。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/kaisetu/index-hw.html

この議論で重要なのは,
「生産年齢人口」って言葉で,
「生産年齢」である15~64歳の人口のこと。

この年齢層が労働力で,
これより若い年少層は,人権的観点から,
「労働に従事させないようにしましょう」と考えられています。
児童労働:http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/ipec/index.htm

65歳以上の老年については,
「最近の老人は元気だから」などという論もありますが,
とりあえず「労働力として期待できない」ということにしておきます。

日本の人口構造は,少子高齢に向かっていて,
総人口に対する生産年齢人口の比率は減少しています。
2050年の予想人口ピラミッドが総務省統計局のサイトにあります。
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/kouhou/useful/u01_z23.htm

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で,ここからは便宜上,
18−21歳の年齢層の人々,つまり「普通の大学性の年齢層」を,
「若者」と呼ぶことにします。

若者は,生産年齢層で,労働力として期待されています。
その期待感は,人口構造の推移から,
今後より高まってくると思われます。

一方,大学進学率は上昇し続け,
ついに2009年には50%を超えるに至りました。
ちなみに高校進学率は30年ぐらい前から90%超えが続いています。
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/3927.html

若者は4世代(4年制大学)なので,
その50%となると,
生産年齢(15−64歳の40世代)の5%です。
つまり,現時点でこの国の労働力として期待できる人口のうち,
5%が「働かないで大学生をしている」計算になります。

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この「5%が働いていない」ことについて,
単純にお金のことだけに着目すると,
2つの視点があります。

1つは単純な話として「働け」という視点です。
総人口が減る,老年人口は増える,生産年齢人口は減る。
そんな社会で,生産年齢の若者を,のんびりさせておく余裕はない。
働いて,稼いで,税金を納めてもらわないことには,困る。
(さらに本音を言えば,大卒より高卒の方が安く雇える)
つまり「労働力としての若者」という視点です。

もう1つは「消費者としての若者」です。
「若者」が「大学生になる・大学生でいる」ことで,
多くのビジネスが動いています。
塾など教育受験産業はもちろんのこと,
学校自体も,そこに雇用があるわけで,一つのビジネス形態です。
また「若者の親世代」は,多くの場合もっとも稼ぐ年齢層なので,
この層から【若者と大学を介して】お金をはき出させることは,
社会として見過ごせない重要な機能です。
仮に「若者」が大学に行かず就職することを考えると,
この「若者の親」は迫り来る自身の老後に向けて貯蓄するでしょうから,
「貯蓄に回ってしまうお金を社会に流通させるため」と考えると,
「消費者としての若者」という触媒の社会的必要性を感じます。

ちなみに大学には多額の税金が投入されています。
国立大学(約1兆円)はもちろんのこと,
私立大学にも国から補助金が投入されています。(約3200億円)

http://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/stat/090503d.html
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/002.htm

これについては,
「生産年齢人口が働かないために税金を使っている」とも考えられます。
「税金の無駄遣いだ」と見るか,「経済を回している」と見るか,
見解がわかれるところでしょう。

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さて,近年の傾向として,
若者人口は減少していますが,
私立大学数は増加しています。
http://eri.netty.ne.jp/data/uni_04.htm

これは良い方向に考えれば,
「より多くの若者に高等教育を受けさせ,より良い社会を築こう」
という風に解釈できます。
一方で,
そんな高邁な思想が近年爆発的に普及して,
みなが雪崩を打って大学の経営に乗り出したのだろう,
と考えるのは,さすがに無理筋な気もします。

むしろ,ちょっと穿った見方になるけれども,
『「大学経営は儲かる」という考えがあったのではないか』
と考える方が妥当な気もします。
大学経営には,先にあげた通り私学助成という税金補助がありますし,
また少子化もあって「子の教育に出費を惜しまない親」も想定されますから,
「おいしいビジネス」と考えるのも,ありえない話では無いと思います。
ちなみに1991年に大学設置基準が緩和されたことが,
大学数の増加のきっかけになったとする論が大勢です。
http://benesse.jp/blog/20121009/p2.html

もちろん,
新たに大学をはじめた人が何を考えていたかはわかりません。

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大学の存在ってのが,こうして考えてきたように,
経済と密接に関わっていて,
しかもその接点が今後より注目を集めることが予想されるわけです。
(主として生産年齢人口減を要因として)

だからこそ,
経済と関係無い部分で,
「社会における高等教育の意義」という大上段に構えた時に,
単なるスローガンや組織論などではなく,
確たる信念と方向性に加え,方法論までをあわせて示す必要があるのでしょう。

それが「グローバル人材の育成」みたいな,
経済側の論理に寄った教育観では,
もう大学に未来はないなぁ,という感じがします。

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海洋系の某独法で働く研究者が思ったことをダラダラと綴っています
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