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自由と信念の箱船で恍惚と不安を抱きストロングスタイルで爆進します!
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調査船の運航費不足,つまり運航日数の減少は我が業界の喫緊の課題である。しかし運航費レベルのお金(300マソ/dayとか)を普通の研究者が自前で稼ぐのは現実的では無く,つまりもうこれは,運航日数が少なくなった現在の状態を,本邦海洋調査のデフォルトと認識すべきであるということだ。その認識をまず共有したい。プレイヤーの意図とは無関係なところで,ゲームのルールは変わったのだ。

たくさんあるシップタイム(運航日数のことです)に対して,研究計画のコンペを開いて,上から順番に実現していく。”今まで”はそういうやり方だった。なぜ”今まで”かと言えば,つまりまだそういうやり方だからなんだけども。でもそれをやると,数件しか採択できない。これは研究哲学の問題かもしれないけど,いくら優れた提案であれ,数件しか採用しないでそれ以外はすべて不採択になる状況は,研究の多様性を担保することや,学生教育の場として機能させるという視点で,あまりに不健全である。

それで,じゃあどうするか。潜んでいる「隠れシップタイム」を掘り起こして有効活用すべきである。たとえば普通に研究計画を立てたのでは協同することが無かった内容を組み合わせることで,シップタイムのシェアが可能になる。物理探査の航海は,出来るだけ走っていたいので定点観測との組み合わせは不向きである。しかし採取物の船上処理がないため乗船者数は多くなく,ベッドは空いている。となれば,航走観測が可能な研究を合わせて実施することができる。あるいは,探査機や潜水船の試験・訓練のための潜航が行われている。試験・訓練という内容を実現できるのであれば,場所は問わないので,何もない海底に潜るぐらいなら,定期的に観察して意義がある場所に潜行する方が良いだろう。操縦訓練であれば,研究に資する採取物をえることも可能だ。

というように,改善の余地は明らかにある。しかし,それを妨げるものもある。「フェアネス」とかいうものだ。いわく「公募を経ていない研究内容を後から好き勝手に追加するのは公募という位置づけを考えた時にフェアではない」とか「試験訓練などの機会をJ社の研究者だけが特権的に利用するのは大学の研究者など業界人に対してフェアではない」とか。

フェアであることは大事だ。それこそ疑う余地はない。一方で,業界内のフェアネスを担保するために,業界全体が縮小する方向に物事を動かすのは,この業界の運営を(税金を通じて国民から)託されている業界人としての資格がない。一般化するなら,内側の論理でもって外側に被害をもたらす,ということかもしれない(違うかな)。

大所高所から発言すべき人にこそ,高らかに宣言していただきたい。「業界内のフェアネスが守られていない?あなたはどっちを向いて言っているんだ。私たちが目指すのは,一つには海洋調査の成果最大化,一つにはそれを通じた国民からの負託への回答。それを実現することこそが正義である。業界内のフェアネスがそれ以上に大事であるはずがない。」と。


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