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主戦場としている学会から,
「10年後の学会のあり方を考え必要な提言を」という任務が与えられたので,
あらためて学会についての考えをまとめてみようと思う。
以下,学会とは「組織としての学会」を意味し,
学術集会とは区別する。
 
学会は,大学等の研究機関とは異なり,
研究者個人が任意に集まり機能している集団であり,
あくまで特定の研究分野の同好会である。
 
学会の役割として考えられることを列挙してみる。
1.学術集会の開催(以下,集会)
2.学会誌の編集(以下,雑誌)
3.学会賞等の授与(以下,学会賞)
4.政府行政等あるいは民間との連絡機関(以下,窓口)
5.学生を含む次世代研究者の支援(以下,若手支援)
6.非研究者層への広報啓蒙(以下,広報)
他にも役割があるかもしれないが,
先の2年間の評議員任務で話題にあがったのは以上の項目。
この他に隠れた機能としては,
「学会長経験者」を産出するというのもあるかもしれない。
(社会的に偉くなるには必要?わからんけども)
 
これらの役割を担うため,
会員は年会費を払い,
一部の者が学会役員・委員業務を負担し,
(役員・委員は約30名。総会員数は約1000名)
学会を運営している。
 
ここで早速まとめてしまうと,
良い学会のあり方とは,
「会費あるいは委員業務の負担」に対して,
「学会が担う役割から得られる有形無形のもの」が,
「個別の会員が納得できる学会」という状況なのだと思う。
 
もっとも大きな「納得できない」部分は,
会費がどのように使われているか,だと思う。
現状どのように会費が使われているかは,
ここでは議論せず,
(ちょっと書いて良いのか躊躇する部分もあるので)
先にあげた学会の役割にかかる費用について考えることにする。
 
 
集会の開催には一定規模の費用がかかる。
しかし実際のところ,
集会開催にあたっては会費とは別に参加費を徴収しており,
参加費のみで十分に集会が可能な状況にある。
当学会は会員外でも発表できるので,
会員に対する参加費の割引(2000円? 年会費は10000円)があるとはいえ,
学会本体の会計から分離しても集会の運営は可能だろう。
 
雑誌の運営には多大な経費がかかっている。
しかしここで重要なことは,
「学会が雑誌を持つことの意義」である。
少なくとも,雑誌を運営することで,
その売り上げで学会として収益を得ることは,
学会が雑誌を運営する目的には該当しないだろう。
かつては(特に和文誌は),
会員間の連絡・情報共有を担っていたかもしれないが,
現在はMLがその役割を代行している状況にあると言える。
一方,日本語での総説は卒論修論生にとっては手頃な教科書となり,
教育・育成・啓蒙の点で一定の役割を果たしていると言える。
(これが学会にとって不可欠であるかは,ここでは議論しない)
現状,学会が雑誌を運営する最も大きなメリットは,
学会として編集に影響力を持てる欧文誌を保有する点だろう。
(たとえば研究の競合による海外誌での不当な扱いを避ける)
これを逆に言うと,
雑誌の印刷・販売などは業者に一任し,
学会は編集のみに責任を持つという体制で,
学会としては十分にメリットを享受できるということであり,
会費を雑誌運営に費やす必要はない,ということでもある。
あまり議論にあがらないが,
編集権を上手に利用して雑誌の活動度を上げるなど,
「出版社に利益をもたらす魅力的な雑誌編集」の責任が,
編集権を持つ学会にあることは明記しておくべきだろう。
 
学会賞(功労賞や奨励賞を含む)には,
メダル作成などで一定の会費が使用されている。
しかし賞に重要なのは「受賞」という事実であって,
必ずしもメダルが必要なわけではない。
(賞状ならたかがしれている)
(果たして受賞実績が重要なのか,も議論がわかれるか)
 
窓口業務には会費負担は無いが,
役員・委員が相応の時間を費やさねばならないという意味で,
負担は大きい。
しかしこれについては,
窓口実績(政府系の委員活動など?)が個人の業績になることを踏まえると,
業務負担する研究者個人的にはトントンなのかもしれないし,
学会としてはノーリスクノーリターンなのかもしれない。
その昔は科研費の審査員や細目を決定するのに,
学会が一定の役割を果たしたとかしていないとか。
あるいは特定の支持母体(パトロン)がある学会の場合は,
寄付金などの受け皿としての窓口業務があり,
これは広く学会員全体の利益となっているのだろうとも想像する。
一方,今後この窓口業務が,
中小学会から大規模連合に一元されることが考えられる。
となったとき,
そもそも中小学会には,窓口業務は求められないかもしれない。
 
若手支援は具体的な策が乏しい。
海外旅費援助などがあるものの応募状況は芳しくない。
(10万円の助成に応募が皆無ということもあった)
実際のところ,学生の間は指導教員の支援などもあり,
旅費などを学会としてサポートする必要がないのかもしれない。
学位取得後の若手が望む支援として考えられるのは,
雇用(身分)の保障,就職口の斡旋であろうが,
これは学会よりも個人規模で情報が行き交うことが多く,
学会としてMLでの公募情報案内をする以上のサポートは難しい。
若手会・ショートコースの開催は,
学部生・院生に対して一定の役割を果たしているかもしれないが,
その効果を追跡し評価することは難しい。
開催の人的・経済的負担との比較となるとなおさらである。
 
一般層への広報としては,
Q&Aをウェブサイトに情報を載せたり,
中等教育への講師派遣事業などを展開しているものの,
その数は多くなく,効果も不明瞭である。
またそもそもこういった事業を学会が主体的に実施する必要性を見いだすことは難しい。
受講者の側に立った時,
派遣元の看板はあまり関係なくなるのでは無いか。
学校同士,つまりは大学を通じて活動する方が効率的かもしれない。
やれば良いことは間違いないが,
時間的経済的な制約がある中でやらねばならないかは議論が必要である。
 
ということで,
本当にゼロベースで考えた時,
・年一回の独立採算の集会開催
・学会組織を背景に持たない雑誌編集組織
・諸連絡・情報共有ML
が機能として存在するミニマムな集団で必要最低限は満たされ,
かつその場合,
年会費はまったく必要なくなる。
 
でもそれは「本当のゼロベース」で考えた場合なので,
次回は現状改善にスポットをあてて考えてみる,予定。
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