自由と信念の箱船で恍惚と不安を抱きストロングスタイルで爆進します!
今回はチーム戦術について。
今大会のキーワードの1つとして「5バック」が挙げられる。
「5バックは4バックより守備的」云々と言われているが,
数字の問題はあまり本質的で無いだろう。
5バックが流行しているのはなぜか。
それはこれまで4バックが流行していたからである。
つまりこういうこと。
===================
4バック,より具体的には「4-4」のツーラインで構築するブロック守備が,
世界の大半のチームで採用される守備戦術であった。
(今でももっともメジャーなやりかたである。)
だから戦術家は「いかに4-4ブロックを崩すか」と考えた。
そうして編み出された戦術が「ブロックの横から侵入する」ことだ。
仮にブロックが高い位置にあれば,
攻め手は,相手ブロックの背後に向かって,サイドから斜めにボールを蹴り入れる。
これで攻撃側FWは前に向かって走りながらボールにタッチ出来る一方,
守備側DFは後ろに向かって走りながら防御せねばならないので,
かなり有効な攻撃である。
だからこの「サイドからボールを蹴り込む選手」については,
「4-4ブロックの外で」マークにいかねばならない。
仮にブロックが低い位置にあれば,
攻め手はゴールラインギリギリまでドリブルで侵入して,
斜め後ろ方向にパスを出す。
攻撃側はゴールに向いた状態でボールの出所も同時に見られるが,
守備側はボール保持者と受け手がそれぞれブロックの前後にいるから,
両方を注視することが難しい。
他にも色々とあるけども,
とにかく,
「ゴールの正面で4-4ブロックを作っておけば守りきれる」
という守備戦術に対して,
「横並びが4人だと約70mのピッチ幅を守るには足りない」
という弱点を見出した攻撃側が,
「ブロックの脇をついて,つまりウイングを基点に攻撃しよう」
という攻撃戦術で4-4ブロックを打ち破りはじめたのが最近のトレンドだった。
ちなみに「パスで崩しきる」という場合には,
4-4ブロックに正面から侵入して,
4-4の隙間でパス回しをすることで突破するという作戦。
これは個々の選手にすごく技術がいるし,
これ一辺倒だとブロックを狭くすれば抑えられるので,
「ブロックを拡げさせる」ためにも,やっぱりサイドへの展開が不可欠になる。
===================
Jリーグに話を戻すと,
この「4-4ブロック崩し」に執念を燃やし,
その攻略法を完璧な戦術として落とし込んだのが,
前サンフレッチェ広島・現浦和レッズ監督のミハエル・ペトロビッチ。
通称ミシャの「ミシャ・サッカー」。
「ミシャ・サッカー」の特徴は5トップ。
つまり相手の4-4ブロックに横串を刺すように5人の選手を配置する。
そうすると先に挙げた,
「4-4ブロックの脇にウイングが構える」のと,
「4-4ブロックの中にパスの受け手がいる」のとを,
同時に実現できる。
さらに相手のブロックの状況に応じて,
「外から崩す」と「中から崩す」の両方を臨機応変に使い分けられるので,
攻めあぐねることが少なく,延々と攻撃を続けられる。
前線に多くの人数を割く超攻撃的布陣で守備の脆さが指摘されているものの,
「4-4ブロック崩し」としては効果絶大。
実際に「ミシャ・サッカー」を大筋で継続しつつ,
森保一監督によって守備にも柔軟性があるようにモデルチェンジした広島は,
J1を2連覇している。
こうして「ミシャ・サッカー」はJリーグの一大トレンドになっていて,
多くのチームが類似の戦術(コンセプト)を取り入れだした。
一方,一大トレンドになっているから,
「ミシャ・サッカー封じ」ももちろん編み出され始めている。
それが「5バック」だ。
簡単に言えば,
「5トップに4バックやからやられるんや!
5トップには5バックで対応や!」
ということで,これが効果絶大。
普段は4バック(4-4ブロック)で戦っているチームも,
ミシャサッカーの広島や浦和と戦う時は5バックを採用し,
攻撃を防ぎきる展開が増えてきた。
(しかし5バックに慣れていないのと守備的になりすぎるので,
勝ちきるよりはズブズブの試合で引き分けになることが多いように)
ちなみに鹿島などは相手がミシャサッカーでも,
「伝統の4バック」を続けている。
(そして負ける)
===================
というJリーグの状況を見ていると,
中堅国を率いる戦術家たちが「5バック」を採用するのは当然の流れで,
5バックで強豪の攻撃力を削ぎ,
攻撃に転じるや両SBがSHの位置まで駆け上がることで,
攻撃と守備の両立を実現した。
このサッカーでは(もちろんミシャサッカーでも),
両SBに守備力・スピード・スタミナが求められる。
SBは消耗が激しいのでバックアップが不可欠になる。
でもJリーグなどクラブチームだと,
予算の関係などで,良いSBを4人雇っておくことは難しく,
1シーズンを戦い抜くことが大変な戦術である。
一方で,国の代表であれば,特にW杯なので,
選りすぐりのSBを両方合わせて4枚選出することが可能で,
代えが効くからこそ,90分間,バンバン走らせることができる。
さらにW杯というモチベーションがあるから,
選手もメンタルを維持して「闘い続ける」ことができる。
===================
で,翻って日本代表だが,
元々ザックは「3-4-3」「サイドで早く攻める」を標榜していたが,
とりあえずは選手に馴染み深い「4-2-3-1」を採用してきた。
いずれにせよ「4-4ブロック崩し」である。
それが1年前ぐらい前に,この攻撃が不調に終わることが多くなってきた。
つまり「4-4ブロック崩し」が効かなくなった。
理由はよくわからないけど,
各国代表が「5バック的」な守備をする柔軟性を身につけてきたからかもしれない。
そうした流れがある中で,
ザックは自論の「3-4-3」をオプションにすることで事態の解決を試みた。
一方,選手主導で「サイド攻撃じゃなく中を崩す作戦」が提案された。
この辺りは今後いろいろと漏れてくるだろうけど,
結果としてザックは選手の意向を汲んで,
「4-2-3-1」という配置で「中を崩す」という戦術を採用した。
ザックにしてみれば,
「4-2-3-1」でのサイド攻撃は十分に染みついているはずだから,
「4-2-3-1」での中央攻撃をオプションにすることで,
「外から」と「中から」の両立が期待できる,という想いがあっただろう。
でも,残念ながら,選手の個人戦術として,それを使い分ける柔軟性が不足していた。
またチーム戦術としても,
「外から」と「中から」を試合の中で臨機応変に,
選手間で意志を共有して使い分けるということが出来なかった。
これがザックの誤算で,今大会の敗因なんじゃないだろうか。
===================
結果論ですが,
海外組は各チームで自分をアピールすることが重要で,
かつチームの中で戦術について深く話すことがなかったせいで,
「選手の個人戦術でチーム戦術を駆動する」ような能力が欠如していた。
もしJリーグの選手だけで代表を構築していれば,
敵味方の差はあれ,常に接しているので,
「広島みたいにアソコはこうしよう」
「鹿島みたいにココはこうしよう」
という形で,
個人の蓄積をチーム戦術のディテールに落とし込むことが可能だったんじゃないか。
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今大会のキーワードの1つとして「5バック」が挙げられる。
「5バックは4バックより守備的」云々と言われているが,
数字の問題はあまり本質的で無いだろう。
5バックが流行しているのはなぜか。
それはこれまで4バックが流行していたからである。
つまりこういうこと。
===================
4バック,より具体的には「4-4」のツーラインで構築するブロック守備が,
世界の大半のチームで採用される守備戦術であった。
(今でももっともメジャーなやりかたである。)
だから戦術家は「いかに4-4ブロックを崩すか」と考えた。
そうして編み出された戦術が「ブロックの横から侵入する」ことだ。
仮にブロックが高い位置にあれば,
攻め手は,相手ブロックの背後に向かって,サイドから斜めにボールを蹴り入れる。
これで攻撃側FWは前に向かって走りながらボールにタッチ出来る一方,
守備側DFは後ろに向かって走りながら防御せねばならないので,
かなり有効な攻撃である。
だからこの「サイドからボールを蹴り込む選手」については,
「4-4ブロックの外で」マークにいかねばならない。
仮にブロックが低い位置にあれば,
攻め手はゴールラインギリギリまでドリブルで侵入して,
斜め後ろ方向にパスを出す。
攻撃側はゴールに向いた状態でボールの出所も同時に見られるが,
守備側はボール保持者と受け手がそれぞれブロックの前後にいるから,
両方を注視することが難しい。
他にも色々とあるけども,
とにかく,
「ゴールの正面で4-4ブロックを作っておけば守りきれる」
という守備戦術に対して,
「横並びが4人だと約70mのピッチ幅を守るには足りない」
という弱点を見出した攻撃側が,
「ブロックの脇をついて,つまりウイングを基点に攻撃しよう」
という攻撃戦術で4-4ブロックを打ち破りはじめたのが最近のトレンドだった。
ちなみに「パスで崩しきる」という場合には,
4-4ブロックに正面から侵入して,
4-4の隙間でパス回しをすることで突破するという作戦。
これは個々の選手にすごく技術がいるし,
これ一辺倒だとブロックを狭くすれば抑えられるので,
「ブロックを拡げさせる」ためにも,やっぱりサイドへの展開が不可欠になる。
===================
Jリーグに話を戻すと,
この「4-4ブロック崩し」に執念を燃やし,
その攻略法を完璧な戦術として落とし込んだのが,
前サンフレッチェ広島・現浦和レッズ監督のミハエル・ペトロビッチ。
通称ミシャの「ミシャ・サッカー」。
「ミシャ・サッカー」の特徴は5トップ。
つまり相手の4-4ブロックに横串を刺すように5人の選手を配置する。
そうすると先に挙げた,
「4-4ブロックの脇にウイングが構える」のと,
「4-4ブロックの中にパスの受け手がいる」のとを,
同時に実現できる。
さらに相手のブロックの状況に応じて,
「外から崩す」と「中から崩す」の両方を臨機応変に使い分けられるので,
攻めあぐねることが少なく,延々と攻撃を続けられる。
前線に多くの人数を割く超攻撃的布陣で守備の脆さが指摘されているものの,
「4-4ブロック崩し」としては効果絶大。
実際に「ミシャ・サッカー」を大筋で継続しつつ,
森保一監督によって守備にも柔軟性があるようにモデルチェンジした広島は,
J1を2連覇している。
こうして「ミシャ・サッカー」はJリーグの一大トレンドになっていて,
多くのチームが類似の戦術(コンセプト)を取り入れだした。
一方,一大トレンドになっているから,
「ミシャ・サッカー封じ」ももちろん編み出され始めている。
それが「5バック」だ。
簡単に言えば,
「5トップに4バックやからやられるんや!
5トップには5バックで対応や!」
ということで,これが効果絶大。
普段は4バック(4-4ブロック)で戦っているチームも,
ミシャサッカーの広島や浦和と戦う時は5バックを採用し,
攻撃を防ぎきる展開が増えてきた。
(しかし5バックに慣れていないのと守備的になりすぎるので,
勝ちきるよりはズブズブの試合で引き分けになることが多いように)
ちなみに鹿島などは相手がミシャサッカーでも,
「伝統の4バック」を続けている。
(そして負ける)
===================
というJリーグの状況を見ていると,
中堅国を率いる戦術家たちが「5バック」を採用するのは当然の流れで,
5バックで強豪の攻撃力を削ぎ,
攻撃に転じるや両SBがSHの位置まで駆け上がることで,
攻撃と守備の両立を実現した。
このサッカーでは(もちろんミシャサッカーでも),
両SBに守備力・スピード・スタミナが求められる。
SBは消耗が激しいのでバックアップが不可欠になる。
でもJリーグなどクラブチームだと,
予算の関係などで,良いSBを4人雇っておくことは難しく,
1シーズンを戦い抜くことが大変な戦術である。
一方で,国の代表であれば,特にW杯なので,
選りすぐりのSBを両方合わせて4枚選出することが可能で,
代えが効くからこそ,90分間,バンバン走らせることができる。
さらにW杯というモチベーションがあるから,
選手もメンタルを維持して「闘い続ける」ことができる。
===================
で,翻って日本代表だが,
元々ザックは「3-4-3」「サイドで早く攻める」を標榜していたが,
とりあえずは選手に馴染み深い「4-2-3-1」を採用してきた。
いずれにせよ「4-4ブロック崩し」である。
それが1年前ぐらい前に,この攻撃が不調に終わることが多くなってきた。
つまり「4-4ブロック崩し」が効かなくなった。
理由はよくわからないけど,
各国代表が「5バック的」な守備をする柔軟性を身につけてきたからかもしれない。
そうした流れがある中で,
ザックは自論の「3-4-3」をオプションにすることで事態の解決を試みた。
一方,選手主導で「サイド攻撃じゃなく中を崩す作戦」が提案された。
この辺りは今後いろいろと漏れてくるだろうけど,
結果としてザックは選手の意向を汲んで,
「4-2-3-1」という配置で「中を崩す」という戦術を採用した。
ザックにしてみれば,
「4-2-3-1」でのサイド攻撃は十分に染みついているはずだから,
「4-2-3-1」での中央攻撃をオプションにすることで,
「外から」と「中から」の両立が期待できる,という想いがあっただろう。
でも,残念ながら,選手の個人戦術として,それを使い分ける柔軟性が不足していた。
またチーム戦術としても,
「外から」と「中から」を試合の中で臨機応変に,
選手間で意志を共有して使い分けるということが出来なかった。
これがザックの誤算で,今大会の敗因なんじゃないだろうか。
===================
結果論ですが,
海外組は各チームで自分をアピールすることが重要で,
かつチームの中で戦術について深く話すことがなかったせいで,
「選手の個人戦術でチーム戦術を駆動する」ような能力が欠如していた。
もしJリーグの選手だけで代表を構築していれば,
敵味方の差はあれ,常に接しているので,
「広島みたいにアソコはこうしよう」
「鹿島みたいにココはこうしよう」
という形で,
個人の蓄積をチーム戦術のディテールに落とし込むことが可能だったんじゃないか。
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