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自由と信念の箱船で恍惚と不安を抱きストロングスタイルで爆進します!
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水泳の指導をしていた時、「腕を前から後ろに掻く」と言っても、選手がうまく出来ないことがあった。それは「前」といった場合、通常の感覚では人体の表面なのだが、水泳的には人体でいう頭の上だからだ。

バスケでは「パスは相手の胸に出す」という。パスを受けた選手が次のプレイに入りやすいからだ。もちろん場合によってパスの高低を工夫することもあるが基本は「相手の胸に出す」。ビシッと相手の胸に出せるのが、競技能力としてはベスト。

「対面でのチェストパス」という、パス練習としては一番基本的なメニューをやることがある。向かい合ってチェストパスを相手の胸に出しあおうというメニュー。この練習はパス交換が出来ればスムースに進められるのだが、パスを落としてしまいがちだと、球拾いで練習時間が無駄になる他、気持ちも切れてしまうという難点がある。だからパス交換がまだ巧く出来ない低学年では(一部の高学年でも)このメニューをこなすこと自体が難しい。練習をスムースに進める指導法はないものかと考えていた。

キッズにパスを教える初手として「相手の胸に出す」は、かならずしも適当ではない気がしてきた。投げ手と受け手、双方に理由がたくさんある。

そもそも人体において「胸」と呼ばれる領域がどの辺りを指す言葉であるか、よくわかっていない子がいる。たとえば「ヘソより上」を胸だと認識しているかもしれない。さらに練習では人体は服の下に隠れているため、相手の胸がどこにあるかは、実は想像しているに過ぎない。これは盲点だった。「コーチ、相手の胸ってどこですか?」と聞かれると、たしかに「この辺り」としか回答できない。選手によって服装がマチマチなので、一括して「ココ」と指定しにくい。その上で、出し手がまだ未熟なので(だから練習をしているので)、胸に出そうとしても、ボールの行き先には、相手の顔から下腹部までぐらいの誤差がある。

受け手に「胸の前に手をあげて待つ」と指導すると、脇を締めた状態から肘から先だけをピョコッとあげて構える場合がほとんど。これでも確かに手の平は胸の高さにくる。しかしパスが低くズレると、手首を返さないと手の平を相手側に向けられず、パスを取れない。あるいは手首を返せずに指が相手を向いた状態になり、突き指するリスクもある。パスが高くズレると、慌てて肘からあげねばならず対応が遅れる。

受け手には、顔にボールが飛んでくるという恐怖心があり、「胸の前に手をあげて待つ」のは顔が守れないため恐怖を感じている様子もある。そういう子に特徴的なのは、胸の位置にあげた手の後ろに顔を隠すべく、アゴを引いて猫背になる構え。肘があげにくく、視線も下向きになり、そもそもの恐怖心も相まって、高くズレたパスをよけてしまう。

こうした難点を回避するため、つまりは「キッズが認知できるピンポイントの場所を指定できる」「ユニフォームを着ていても露出している」「誤差まで含めてパスが取れる範囲におさまる」「腕全体を使った受け手の構えの指導がしやすい」「顔にくる恐怖心を取り除ける」ことを満たす指導をした方が良いなと考えた。

「(練習では)パスは相手のアゴに出す」が、最適解なんじゃないかと考えた。まず的が「点」で明瞭になる。キッズもアゴは知っている。アゴを狙って低めにズレると胸になる。アゴの前で構えるには上腕からあげる必要がある。「顔にくるかもしれない」ではなく「顔にくる」設定なので、恐怖心克服には向いている。

低学年のうちは「アゴに出す」で指導をして、パス練習そのものを円滑に回せるようにする。そこでパスにかかわる神経系と筋力を確立する。高学年になったところではじめて「競技としては受け手が次のプレイに移りやすい場所にパスを出す。たとえば胸、伸ばした腕の先、空いている空間など」とパスの出し先の指導を開始する。そういう手順の方が良いんじゃないかな。
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